サウナブームの高まりにより、温浴施設だけでなく、宿泊施設やキャンプ場などでもサウナを導入する動きが広がっています。
しかし、サウナは単なる設備ではなく、熱・電気・火気を扱う特殊な空間です。
そのため、設置には複数の法令・基準を遵守する必要があります。
この記事では、事業者がサウナを設置する際に必ず確認しておきたい主要な法令や基準を解説します。
サウナ設置時に守るべき法令・基準

サウナの設置には、建築・消防・衛生・電気など複数の分野の法令が関係します。
法令を無視すると、営業許可が下りなかったり、事故発生時に責任を問われるリスクもあります。
主に関係する法令は以下の7つです。
- 建築基準法
- 消防法
- 公衆浴場法
- 電気事業法(電気式ヒーターの場合)
- 地域条例・自治体独自基準
- 労働安全衛生法
- 火災保険・施設賠償保険の適用基準
ここからは、サウナ設置時に守るべき各法令・基準について詳しく解説します。
建築基準法
サウナを設置する場合は、建築物の一部として同法および関係基準に従う必要があります。
第2条
二 特殊建築物 学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。
引用元:建築基準法 | 第2条第2号
サウナ室では高温や湿気による火災・劣化リスクがあるため、壁や天井には不燃または準不燃材料を使用し、防火区画内に設けることが求められます。
また、設備の能力も一定の基準を満たさなくてはなりません。
換気が不十分だと、二酸化炭素濃度の上昇や結露によるカビ発生が起こりやすくなります。
設計段階で建築士と協議し、建築確認申請にサウナ室の仕様を正確に反映させることが重要です。
消防法
サウナヒーター(電気・ガス・薪)はいずれも「火気使用設備」に該当し、消防署への届出が必要です。
第9条
第九条 かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、こんろ、こたつその他火を使用する器具又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある器具の取扱いその他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
引用元:消防法 | 第9条
特に高温機器を扱うため、熱源から可燃物までの離隔距離を明示した図面提出が求められます。
消防法施行規則では、可燃物が輻射熱で着火しないよう、ヒーター周囲に一定の離隔距離を取ることが推奨されています。
さらに天井までの距離が近い場合、輻射熱を遮る不燃パネルを設置するなどの対策が必要です。
加えて、サウナ室内には自動火災報知設備(感知器)を設けることが一般的で、温度上昇による誤作動を防ぐために「耐熱型感知器」や「遠隔型感知器」を使用することが望まれます。
また、ヒーター電源の制御盤は室外(操作可能な場所)に設置し、異常加熱時に自動停止する安全装置を備えると安全性が高くなります。
施設全体としては、サウナ室が「火気使用室」として扱われるため、防火管理者の選任や防火点検記録の保管も必要です。
消防法対策を事前に整備しておくことで、消防検査をスムーズに通過でき、後のトラブルも防止できます。
非常電源・避難誘導設備に関する留意点
商業サウナでは停電・地震などの災害時に利用者を安全に退避させるための設置基準が定められています。
特に電気式ヒーターを使用する場合は、以下の項目が安全計画に含まれているか確認が必要です。
- 非常時自動停止回路(停電時にヒーターが再点火しない構造)
- 避難誘導灯・非常照明の独立電源(蓄電池または非常電源)
- 非常ベルまたは館内放送との連動
それぞれ消防法では「防火対象物点検基準」に含まれ、サウナ単体ではなく建物全体の安全計画として審査されます。
特に宿泊施設や大型温浴施設の場合、非常電源の確保が許可条件になるため軽視できません。
公衆浴場法
宿泊施設や温浴施設でサウナを設置する場合は、公衆浴場法の適用を受けるため、管轄の保健所長の許可を得なくてはなりません。
第2条
第二条 業として公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
引用元:公衆浴場法 | 第2条
公衆浴場法は「公衆が利用する入浴施設」における衛生管理や構造基準を定めています。
たとえば、サウナ室内の温度計・湿度計の設置、清掃や換気の頻度、利用者の安全確保などが細かく規定されています。
営業許可を得る際には、保健所の立ち入り検査が行われるため、設計段階で必ず保健所に相談しておきましょう。
電気事業法(電気式ヒーターの場合)
電気式サウナヒーターを使用する場合は、電気事業法の「電気工作物」としての安全基準が適用されます。
特に三相電源を使う業務用ヒーターは、電気主任技術者による確認や漏電遮断装置の設置が必須です。
事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。)に該当する電気工作物を設置する事業場には、その規模や受電電圧に応じて、第一種電気主任技術者、第二種電気主任技術者もしくは第三種電気主任技術者を選任する必要があります。
たとえば、サウナ内での湿気が原因で配線が劣化した場合、漏電による火災や感電事故が発生する可能性があります。
そのため、防湿仕様のケーブルや絶縁材を選定することが重要です。
省エネ法(およびエネルギー使用届出義務)
電気・薪・ガスいずれの熱源を使用する場合でも、年間のエネルギー使用量が一定規模を超えると、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づく届出が必要です。
次のような指定を受けることになります。
- 延床面積2000㎡以上の温浴施設:定期報告義務(年1回)
- 電気使用量が原油換算1500kL以上:エネルギー管理指定工場扱い
エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下「省エネ法」という。)は、一定規模以上の(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用する)事業者に、エネルギーの使用状況等について定期的に報告いただき、省エネや非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を行っていただく法律です。
引用元:省エネ法の概要「省エネ法とは」
特に電気式サウナヒーターを複数台導入する大型施設では、契約電力の増設や電力ピーク抑制策(デマンド制御)の検討が必要になります。
設計段階で電力会社との調整を怠ると、運転時にブレーカー遮断などのトラブルが生じるリスクがあります。
地域条例・自治体独自基準
サウナの設置は、国の法律(建築基準法・消防法・公衆浴場法)だけでなく、自治体ごとの「生活環境保全条例」「建築基準条例」「温浴施設運営指導要綱」にも適合させなくてはなりません。
特に薪を燃やすタイプは、都市部・住宅地・観光地など地域によって扱いが異なります。
たとえば、以下のような違いが現実的に発生します。
| 地域の例 | 主な規制内容 | 補足説明 |
|---|---|---|
| 東京都・横浜市などの大都市圏 | 薪ストーブやサウナ用ストーブなどの燃焼設備を「煙突設置施設」として届出が義務化されている | ・設置前に消防署や自治体への届出が必要 ・無許可設置は違反扱いになる場合がある |
| 北海道・長野などの寒冷地 | 「低温燃焼方式」や「煙突の断熱層の厚み」などが細かく規定されている | 気温差による結露や排気トラブルを防ぐための安全基準が設けられている |
| 温泉地・自然公園区域 | 景観条例により外装材の色や煙突の高さに制限がある | 周囲の景観保全のため、派手な外観や高すぎる構造物は認められない場合がある |
このように、地域ごとの条例確認を怠ると、設置後に是正命令や使用停止処分を受けることもあります。
そのため、設計段階で自治体建築指導課・環境課への事前相談が不可欠です。
労働安全衛生法
サウナを商業施設として運営する場合、従業員が日常的に高温多湿環境下で点検・清掃・薪管理などを行うことになります。
したがって、労働安全衛生法に基づく「作業環境管理」および「健康管理」の基準が適用されます。
第606条(温湿度調節)
第六百六条 事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。
引用元:労働安全衛生規則 | 第606条
特に薪式・高出力タイプでは、作業中の熱ストレスや一酸化炭素曝露が問題になります。
主な基準は以下の通りです。
| 基準内容 | 目的・注意点 | 管理上の分類 |
|---|---|---|
| 室内温度が40℃を超える場合は、作業時間を15分以内に制限する | 長時間の高温作業による熱中症や脱水を防ぐため | 事業者の安全管理義務 |
| 薪燃焼サウナでは、燃焼室付近の一酸化炭素(CO)濃度を50ppm以下に保つ | 中毒事故を防ぐため(CO警報器の設置が求められる地域もある) | 事業者の設備管理義務 |
| 点検・メンテナンス時には耐熱手袋・防火服などの保護具を着用する | 火傷や火災事故を防止するための基本的な安全対策 | 事業者の労働安全管理義務 |
それぞれ顧客向けではなく、事業者責任としての管理義務に分類され、保健所・労基署の監査対象となります。
火災保険・施設賠償保険の適用基準
サウナは高温機器を扱うため、保険会社が定める「特定危険設備」に該当します。火災保険・施設賠償責任保険を契約する際には、必ず以下の確認が必要です。
- サウナストーブのメーカー型式が認可済みであるか
- 営業用サウナとしての使用申告がなされているか(住宅用扱いは対象外)
- ロウリュ実施を想定した水使用リスクが保険対象に含まれているか
保険適用を誤ると、火災・水漏れなどの事故発生時に補償を受けられないことがあります。
サウナ室の設置基準

サウナ室は利用者が安全かつ快適に利用できるよう、建築・消防・衛生の観点から細かい基準が設けられています。
特に重要な基準は次の4つです。
- 防火区画内に設置すること
- ドアは外開き・耐熱ガラスにすること
- 警報装置または非常ボタンを設置すること
- 耐震性の高い構造にすること
ここからは、サウナ室の設置基準それぞれについて、詳しく解説します。
防火区画内に設置すること
サウナ室は高温・高湿環境下にあり、万が一の火災時には延焼リスクが高いため、防火区画内に設けなくてはなりません。
壁や天井、床には不燃または準不燃材料を使用し、断熱層を設けることで熱が外部に伝わらないようにします。
木製パネルを使用する場合でも、背面には耐火ボードを組み合わせることで防火性能を確保できます。
ドアは外開き・耐熱ガラスにすること
サウナ室のドアは、緊急時に迅速に避難できるよう「外開き」にすることが義務づけられています。
また、視認性と安全性を高めるため、耐熱ガラスの小窓を設けるのが一般的です。
もし内開きドアにすると、室内で倒れた利用者がドアを塞ぐ可能性があり、救出が困難になります。
安全性の観点からも、ドア構造には細心の注意が必要です。
警報装置または非常ボタンを設置すること
サウナ室内での急病や事故に備えて、非常ボタンまたは警報装置を設置する必要があります。
押すと館内に警報音が鳴る仕組みにしておくと、スタッフがすぐに駆けつけることができます。
特に一人利用の時間帯や夜間営業の施設では、緊急時の救助体制を整えておくことが重要です。
耐震性の高い構造にすること
木造または軽量鉄骨造の建物にサウナを設置する場合、ストーブや煙突など高重量設備の固定方法に耐震基準が関係します。
特に薪式サウナは燃焼炉・石・煙突を合わせて200kgを超えることがあり、地震時の転倒・落下を防ぐために以下の基準が求められます。
- 重心位置を床面より1/3以内に抑える設計
- 固定ボルトまたは防振架台による二重固定
- 煙突部の屈曲部に「地震変位吸収継手」を設ける
それぞれ建築基準法第20条(構造強度)の実務運用に基づく判断であり、申請時に構造図の添付を求められるケースがあります。
(構造耐力)
第二十条 建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。
(以下略)
引用元:建築基準法 | 第20条
サウナヒーターの設置基準

サウナの心臓部であるヒーターにも、法令やメーカー指定に基づく設置基準があります。
サウナヒーターは種類ごとに安全対策の内容が異なります。
- 電気式サウナヒーターの設置基準
- ガス式サウナヒーターの設置基準
- 薪ストーブ式サウナヒーターの設置基準
サウナヒーターの設置基準についてそれぞれ詳しく解説します。
電気式サウナヒーターの設置基準
電気式ヒーターは一般的に使用されるタイプです。
しかし、配線容量・漏電遮断器・接地(アース)の確保が必須です。
電源容量が不足するとブレーカーが頻繁に落ち、過熱や火災の原因になります。
また、サウナストーンへの注水(ロウリュ)を行う場合は、防水仕様の電気部品を使用する必要があります。
また、ヒーターは壁や柵から火災予防上安全な距離を保つ位置に設けなくてはなりません。
機器を安全に設置・使用するために必要な、機器と周囲の建物や可燃物・他の機器などとの間の距離を「離隔距離」といいます。
壁、天井等について、建築物の仕上げ、構造等にかかわらず、保つべき火災予防上安全な距離を「保有距離」といいます。
サウナヒーターには「離隔距離」と「保有距離」が必要です。
電気式サウナヒーターの具体的な離隔距離は、日本サウナスパ協会「サウナ設備設置基準」の「図1 対流型放熱器の離隔距離等及び周辺の仕上げ」を参考にしてください。
ガス式サウナヒーターの設置基準
ガス式ヒーターを使用する場合、ガス配管の材質や排気設備の構造が重要です。
排気ガスが逆流すると、一酸化炭素中毒の危険があるのです。
したがって、排気ダクトの勾配や長さを基準値内に収めなければなりません。
また、定期的なガス漏れ検査と換気量の測定も求められます。
電気式サウナヒーターと同じく、ガス式サウナヒーターにも「離隔距離」と「保有距離」が決められています。
薪ストーブ式サウナヒーターの設置基準
薪ストーブ式は自然派キャンプ場などで人気です。
ただし、煙突の施工や床の耐火性能など、他のヒーターに比べて厳しい基準が求められます。
薪投入口の周囲は不燃材で囲み、床には耐熱レンガや金属プレートを敷設します。
たとえば、可燃物が50cm以内にあると火災リスクが高まるため、空間レイアウトの工夫が必要です。
離隔距離は本体から側面50cm以上、背面60cm以上、前面(薪投入口)1m以上を確保します。
薪ストーブ式サウナヒーターで特徴的なのが、煙突です。
煙突は二重断熱煙突を使用し、可燃物との離隔を外周から200mm以上確保しなければなりません。
天井貫通部には耐火スリーブ(断熱材付き)を挿入し、屋根貫通部には防雨キャップを設けます。
また、薪を直接燃やすため、二酸化炭素が排出されることから換気が大切です。
燃焼用給気口を床付近に、排気口を天井付近に設け、1時間あたり6回以上の換気量を確保します。
離隔距離や煙突、換気などの基準を守ることで、輻射熱による壁面焼損や煙突火災を防ぎ、安全かつ長寿命な運用が可能となります。
設置基準を守ればカナディアンサウナのような豪華設備も思いのまま設置できる!

サウナを始めるにあたって守らなくてはならない法律は意外と多いです。
しかし、設置基準を守らなければ重大な事故につながりかねません。
設置基準を守ることで安全性を保ちつつ、デザイン性の高いサウナの営業を始めることができます。
カナディアンサウナは一般的なサウナに比べるとデザイン性が高く魅力的なサウナです。
「ナイアガラ」や「ヴィスラー」といった屋外サウナは、外装が黒を基調としておりシックな佇まい。
ウエスタンレッドシダーを使用しているため、爽やかで少し甘味のある香りに包まれて「ととのい」体験をすることが可能です。
カナディアンサウナを導入することで施設の魅力が上がること間違いなし。
設置基準を守ればこういったサウナも自由自在に選べるので、まずは設置基準を守りましょう。

